朝ドラ「らんまん」に登場したイヌトウキってどんな植物?類似品種も紹介!

NHK連続テレビ小説らんまんの第9話で登場したイヌトウキとはどんな植物なのか悩む女性イヌトウキ
らんまんに出てきたイヌトウキってどんな植物?

らんまんに登場したイヌトウキってどんな植物?

NHK連続テレビ小説らんまん第9話で槙野万太郎がイヌトウキを発見するシーン

引用元 NHK連続テレビ小説らんまん 第9話

NHK連続テレビ小説「らんまん」の第9話で登場したイヌトウキ

蘭光先生が学問所の閉鎖で佐川を離れることになり、落ち込む万太郎を最後の課外授業と称して仁淀川に連れて行きました。

そこで見た事のない植物を見つけた万太郎。

「この葉の切れ込みの具合は当帰じゃないのか」と言う万太郎に、蘭光先生はこれはイヌトウキだと教えます。

NHK連続テレビ小説らんまん第9話で万太郎が見つけたイヌトウキの葉と当帰の葉の比較

イヌトウキと当帰の葉の比較

こうやって比べてみると葉だけでも結構違いがありますね。

初めて聞く植物の名前に「イヌトウキって何?」と疑問に思った人も多いのではないのでしょうか?

どんな植物なのか詳しくみていきましょう。

イヌトウキはセリ科の多年草

イヌトウキ

引用元 マルコーフーズ

イヌトウキは江戸時代には薩摩藩で「門外不出の秘薬」「神の草」などと呼ばれ、万能薬として古来より重宝されてきました。

現在は鹿児島県の霧島地方のほか、四国の山間地や紀伊半島の一部で栽培されています。

学名はAngelica shikokiana Makino ex Y.Yabeで、草丈は4080cm、セリ科シシウド属の多年草。

見た目が朝鮮人参に似ていることから日本山人参と呼ばれることもあります。

万太郎は葉が似ている事から近隣種の当帰と勘違いしていましたね。

イヌトウキは生薬に登録されておらず、サプリメントなどの健康食品に栄養価が高い根が使えるので、近年注目されつつある植物です。

 

モデルとなった牧野富太郎氏が発見・命名

槙野万太郎のモデルになった牧野富太郎氏

牧野富太郎氏 引用元:高知県立牧野植物園

槙野万太郎のモデルとなった牧野富太郎氏は、明治時代に活躍した植物学者です。

代表的な著書は「牧野日本植物図鑑」。

日本各地を巡り、植物に関する知識を広めることに尽力したため「日本の植物学の父」とも呼ばれています。

その功績から、牧野富太郎氏の誕生日の4月24日は「植物学の日」とされています。

 

イヌトウキの名前の由来

「イヌ」は植物界では本物より役に立たない」という意味で使われます。

蘭光先生がドラマの中で「似て非なるもの、さしずめイヌトウキといったところか。当帰とは匂いが違う」と言っていましたよね。

史実でも『牧野日本植物図鑑』にて「日本名犬トウキで、トウキに似て役に立たないことによる」と表現されています。

これは、和名を決める際に現地の人に名前を尋ねたところ、外に広まるのを恐れて「犬も食わない」と意味で「イヌトウキ」と答えたためだと言われています。

門外不出のまま守るために、わざとイヌトウキという和名にしたということでしょう。

 

トウキが付く名前の植物7選

イヌトウキを調べるうちに「○○トウキ」とイヌトウキと似た名前の植物がたくさんあったのでまとめてみました!

今回は有名な7種類を厳選!

ひとつひとつ、みていきましょう。

当帰に分類される4種

漢方にも使われていて1番有名な当帰と、原材料欄でトウキと表記されることもある亜種から紹介しますね!

 

①当帰(トウキ)

トウキの花

トウキ

万太郎がイヌトウキと勘違いした植物がこれです。

トウキは、日本や中国、韓国などでも栽培されている、セリ科の多年草です。

高さは30100cm

古くから薬用として栽培されており、香りはセロリに似ていると言われることも。

蘭光先生が「匂いが違う」と言っていただけあって特徴的な匂いなんですね。

初夏から秋にかけて、小さくて白いかわいい花を咲かせる植物です。

明治時代に公示された「日本薬局方」に生薬として登録されました。

トウキは月経不順、冷え性、めまい、耳鳴り、滋養強壮などの効能があり、女性によく効くと言われている生薬です。

当帰芍薬散をはじめ、さまざまな漢方薬を構成する生薬に使われており、現在では日本国内で使用されている生薬ランキングでトップ2に入るほど人気な生薬です。

 

②北海当帰(ホッカイトウキ)

ホッカイトウキ(北海当帰)の花

北海当帰 引用元:四季の山野草

その名の通り、北海道で多く栽培されているトウキです。

昭和になってどこからともなく現れた品種ですが、実際はホッカイヨロイグサとトウキが交配されたものだと言われています。

収穫量が多いという特徴から、現在生薬として使われている品種は「トウキ又はホッカイトウキ」とされています。

そのため、当帰芍薬散に用いられている品種ももちろん、トウキかホッカイトウキ。

ただしこの二つのトウキは全く同じものではありません。

トウキより、ホッカイトウキの方が根が太く長く、草丈は高く、茎の色に関してはトウキは紫色である一方、ホッカイトウキは緑色という違いがあります。

とはいえ、植物の見た目の差はありますが主成分は同じです。

成分は、子宮の異常の収縮による月経痛などを抑えるクマリン誘導体(スコポレチンなど)やフタリド類(リグスチリドなど)、気持ちを落ち着かせるポリアセチレン化合物が代表的です。

 

③大和当帰(ヤマトトウキ)

ヤマトトウキ(大和当帰)の花

大和当帰 引用元:四季の山野草

奈良県の吉野地方で栽培されているヤマト(大和)トウキ。

比較的甘みのあるトウキだと言われています。

実はトウキの別名はニホントウキ、オオブカトウキ、ヤマトトウキ。

つまり、トウキ=ヤマトトウキです。

ヤマトトウキの根は生薬として登録されているため、根のままの状態でみなさんの手に入ることはありません。

しかし、ヤマトトウキの葉は生薬ではないので、そのままの状態で出荷することができます。

セリの香りとパクチーの風味が漂う独特の和製スパイスのような味であるため、「和のハーブ」として、ピザやパスタに載せる食用や入浴剤にも使われています。

気になる方はぜひ検索してみてください!

 

④深山当帰(ミヤマトウキ)

ミヤマトウキ(深山当帰)の花

深山当帰 引用元:四季の山野草

ミヤマ(深山)トウキは別名イワテトウキ、ナンブトウキとも呼ばれ、北海道から東北地方で栽培されています。

高山型の植物であり、小型で草丈は2050cm

トウキより葉がシャープで、光沢があるのが特徴です。

ミヤマトウキは生薬として登録されていません。

ただ現在のトウキは、元々日本で自生していたミヤマトウキが栽培化、改良化されてできたものだという説もあります。

トウキのご先祖様という感じですね。

 

類似品種3種

生薬「当帰」に分類されない類似品種も紹介しますね。

イヌトウキもこちらに属します。

 

⑤漢方に使われている日向当帰(ヒュウガトウキ)

日向当帰(ヒュウガトウキ)の花と葉

日向当帰 引用元:四季の山野草

主に宮崎県、大分県で栽培されているヒュウガトウキ。

草丈は1.82.5mの多年草。

トウキと同じくセリ科の植物であり、根が生薬として登録されています。

イヌトウキと同じく「日本山人参」とも呼ばれています。

生薬である根の主成分は、トウキとは異なり、YN-1(イソエポキシプテリキシン)。

効果効能は、食後の血糖上昇を抑える作用や過度な血圧上昇を抑える作用、アレルギーを抑える作用などがあります。

一方、ヤマトトウキのように、葉はサプリメントやお茶など健康食品として使われています。

 

⑥当帰の名前の元になった唐当帰(カラトウキ)

唐当帰(カラトウキ)の花

唐当帰 引用元:MARCHE AOZORA

中国でトウキといえば、カラ(唐)トウキ。

日本産ではないため、日本薬局方に生薬として登録はされていませんが、トウキの名前の由来であると言われています。

カラトウキは、日本産のトウキに比べると根が太く香りも強いため品質が良好だとも言われていますが、薬効的な研究はほとんど進んでいないため、詳しいところはわかっていません。

 

⑦天使のハーブと呼ばれる西洋当帰

セイヨウトウキ(西洋当帰)の花

西洋当帰 引用元:Wikipedia

セイヨウトウキは別名ヨーロッパトウキとも呼ばれ、ヨーロッパの湿原や山地で栽培されている植物です。

2年草であり、高さは90180cm

根、茎、葉が食材や観賞用に好まれており、サラダや、ケーキの装飾、スナック、リキュールの風味づけに使われています。

エッセンシャルオイルや香水としても人気のある植物です。

またセイヨウトウキは「天使のハーブ」とも呼ばれていて、大天使ミカエルの記念祭に花を咲かせることから名前がついたそうです。

天使といえば「Angel」ですよね。

実はセリ科の属名はAngelica全てのセリ科の植物は「Angelica〇〇」と表記されます。

これは、天使の「Angel」からきていると言われています。

名前の由来はヨーロッパからもきているんですね。

 

まとめ

今回はNHKで話題の朝ドラ「らんまん」に登場するイヌトウキについて解説しました。

登場の仕方から重要なシーンへの布石でしょうから、今後どのようにイヌトウキが登場するのか楽しみですね!

トウキは薬学部で学んだので知っていましたが、イヌトウキや他の類似品種は知らなかったので、その多さにとても驚きました。

イヌトウキは日本の固有種ですが、名付けの元のトウキは中国由来で学名の元はヨーロッパというのは、意外とグローバルでとても興味深かったですね。

みなさんも「らんまん」と当ブログをきっかけに、イヌトウキに興味を持っていただければ幸いです。

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